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エクソソームとがんの関係性

エクソソームは人体の細胞の殆どで分泌される極小の細胞外小胞です。


エクソソームの役割は長い間不明のままでしたが、近年の研究でエクソソームに含まれるタンパク質、脂質、RNAなどの成分が血中から他の細胞に運搬されることで、機能的、生理的な変化を起こして細胞間の情報伝達を行っていることが明らかになり、エクソソームが細胞の分化や、免疫系の制御、がんの増殖や転移にも関わりを持つ可能性が示唆されました。


正常細胞由来のエクソソームは、体内に侵入した病原菌や腫瘍などの情報を免疫担当細胞に受け渡すことで、免疫応答の媒介となっていることが示唆されています。

免疫担当細胞以外にもエクソソームは様々な細胞に情報を送り、組織の修復やタンパク質の運搬などを円滑化させて、人体の機能を働かせる上で重要な役割を担っていると考えられています。


一方で、がん細胞由来のエクソソームは免疫細胞を不活性化させる働きや、骨髄細胞に作用することで、がん細胞の浸潤以前から、がん転移が起こりやすい環境を形成する性質があることが確認されています。

このエクソソームの性質から最新のがん治療では、がん由来のエクソソームの産生や働きを阻害することで、がんの進行を抑制する治療方法の研究が進められています。

がん由来エクソソームの人体への影響
・血管新生を誘発させてがん転移を促進させる

・骨髄に働きかけてがん細胞が増殖(転移)しやすい環境を整えさせる

・脳を毒素から守る脳血液関門を破壊して脳転移を促進させる

・腹膜を構成する中皮細胞を細胞死へと誘導して腹膜播種性転移を促進させる

がん由来エクソソームによる、がん転移の促進作用

がん細胞は原発部位毎に「転移のしやすさ」や「転移しやすい部位」が異なります。

小さながん細胞でも転移しやすい種類もあれば、浸潤したがん細胞であっても転移が起こりにくい種類もあり、この原因に関しては近年まで解明されていませんでした。


ですが、2011年に米国の研究グループの研究成果によって、がん転移のメカニズムにがん細胞由来のエクソソームが関与していることが明らかにされ、続いて2015年には、がん細胞由来のエクソソーム含まれるインテグリン(integrin)に、その種類毎に特定部位への転移を誘発する臓器特異性を持つパターンがあることが証明され、インテグリンを利用した転移先の予測法や転移の予防法などの研究が行われるようになりました。

がん細胞由来のエクソソームに含まれるインテグリンα6β4やインテグリンα6β1は肺転移を、インテグリンαvβ5は肝臓への転移を誘発することが確認されており、それぞれのインテグリンの発現を低下させた場合、対応部位での、がん細胞の働きが弱まるという結果がみられました。

がん由来エクソソームは血管新生を促進させてがんを転移させる

がん細胞は自身が成長し続けるために、大量のエネルギーを必要としています。

がん細胞はこのエネルギーを確保するために、自身の周辺の血管からがん細胞へと続く血管を作り出して、豊富な血液を呼び込んでいます。

このような、がん細胞が成長のために血管を作り出すことを腫瘍血管新生と呼び、腫瘍血管新生で形成された血管を通って、がん細胞が全身へと散ってしまうことが、がん細胞が原発部位から離れた臓器にも転移してしまう原因の一つだと考えられています。


細胞は低酸素状態にあると、血管新生を防ぐ因子であるEphrinA3の産生を抑制する作用を持つmiR-210を多く含んだエクソソームを分泌します。

酸素を嫌っているがん細胞は、自身の周辺に低酸素の環境を形成することでmiR-210を多く含むエクソソームを分泌して、腫瘍血管新生を促進させていることが分かっています。

現在ではmiRNAの働きを抑制するで、転移の原因となる腫瘍血管新生を防ぐ為の研究が進められています。

エクソソームを利用したがん診断方法

最新のがん治療研究では、エクソソームに内包されているmicroRNA(miRNA)という核酸の構造が腫瘍細胞の種類によって異なることが明らかとなっており、がんの発見、腫瘍の原発位置の特定、進行状況の把握などに役立てる指標(バイオマーカー)として活用するための研究が進められています。


※2014年から独立行政法人国立がん研究センターでは、miRNAを利用した診断システムの開発を行っており、現在では13種類のがん種において、発見が難しいステージ0の早期がんであっても、1滴の血液から9割を超える精度でがんを発見することが出来るようになっています。