がん(癌)一般情報

がんの一次予防

がんは心掛け次第で予防できます

がんを患う原因となっているのは様々な要素が考えられますが、その多くは日頃の食事内容や睡眠、たばこなどの 生活習慣に起因していることが判明しています。
がんは10年、20年という長い間を掛けて徐々に遺伝子が傷つけられ発病することも多く、発生時点での自覚症状に 乏しいため、がんの最大の対策となるのはがんを発症しにくい生活環境をつくる一次予防が大切になってきます。

一次予防のための習慣作り

次に挙げる事は、がんの一次予防のために非常に重要な要素です。
実践しやすい項目に注目し対策することで、「がん予防」に役立ちます。

  • タバコを吸わない
  • 旧式タバコの副流煙には発がん性の物質が大量に含まれており、肺がん、食道がん、舌がん、 咽頭・喉頭がん等の頭頸部がん、腎盂・尿管がん、膀胱がんなど様々ながんを発症させる危険因子となります。
    若い方でもタバコを頻繁に吸う方の場合、非喫煙者と比べて肺がんのリスクは10倍以上に上がります。
    タバコによるがんリスクは持続し、非喫煙者のがんリスクと遜色ない発症リスクまで改善させるには禁煙から10年程かかります。

  • アルコールの摂取を抑える
  • アルコールの大量摂取は食道がん、舌がん、咽頭・喉頭がん等の頭頸部がん、乳がん、肝臓がん、大腸がん(直腸がん)などの危険因子となります。
    適量であれば問題ありませんが、強いお酒や過剰な摂取は粘膜を傷付けて、がんの発症原因となります。

  • 熱すぎる食べ物を控える
  • 。 熱すぎる食品を口にすることで細胞の遺伝子が傷付きがん発症の原因となる場合があります。
    (食道がん、舌がん、咽頭・喉頭がん等の頭頸部がん、胃がんの危険因子)

  • 塩分の摂取を避ける
  • 塩分の過剰摂取も胃の粘膜が炎症を起こす原因となりがんの危険因子となります。
    がん以外にも脳卒中や心臓病などの原因となるため注意が必要です。
    現代人の食生活は塩分を過剰に摂取しがちなので、日頃から意識が大切となります。

  • 動物性脂肪の取りすぎに気をつける
  • 肉類や乳製品などの動物性脂肪を多く含んだ食品は大腸がん、乳がん、前立腺がんなどの危険因子となります。
    塩分と同じく動物性脂肪の摂取量は過剰になりがちなため注意が必要です。

  • 極度の日焼けは避ける
  • 太陽光に含まれる紫外線は皮膚細胞の遺伝子を傷付けて皮膚がんの危険因子となります。

  • 焦げた食べ物は口にしない
  • 食物の焦げにはアクリルアミドと呼ばれる発がん性物質が含まれており胃がんの危険因子となります。
    焦げていなくても加熱温度が高く、調理時間が長くなるとたんぱく質の一部が変質して生成される場合があります。

  • 野菜や海藻類を食生活に取り入れる
  • がんを予防において、5大栄養素のバランスは非常に重要となります。
    5大栄養素の中でも不足しがちなビタミンやミネラルは野菜や海藻類を食生活に取り入れることでバランスを改善することが出来るでしょう。
    野菜や果物に含まれるポリフェノールやビタミンCなどはがん発生の原因となる活性酸素を減らす働きがあります。 現代人に不足しがちなミネラルも海藻類に豊富に含まれており、免疫力や抗酸化力の維持に役立ちます。

  • ストレスを受け続ける環境を避ける
  • 過度または持続したストレスは人の自律神経のバランスを乱して、免疫力を大きく低下させる原因となります。
    適度な運動は気分転換や自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。

    がんの部位 相対リスク*1(男性)/
    人口寄与危険*2
    相対リスク*1(女性)/
    人口寄与危険*2
    口腔・咽頭 27.48倍/92% 5.59倍/61%
    食道 7.6倍/78% 10.25倍/75%
    膵臓 2.14倍/29% 2.33倍/34%
    喉頭 10.48倍/81% 17.78倍/87%
    22.36倍/90% 11.94倍/79%
    腎臓 2.95倍/48% 1.41倍/12%
    膀胱 2.86倍/47% 2.58倍/37%
    *1 相対リスク:非喫煙者と比べた場合の喫煙者におけるがんの危険性
    *2 人口寄与危険:がん患者の中で喫煙が原因であると考えられる割合

    がんは早期発見・早期治療が大切

    「がん」は不治の病と言われてきましたが、現在では発見が早期の場合、半数以上の方が治癒しています。
    一部のがんを除けば早期発見・早期治療によって治る病気になりつつあるのです。

    ただし、がんの早期の段階ではほとんど自覚症状がありません。
    そのため、がんを早期発見するには定期健診をしっかりと受けることが大切です。

    がんの種類

    腫瘍とは、細胞が異常増殖してできたもので「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」に分けられます。

    良性腫瘍は細胞増殖はしますが増殖スピードは比較的穏やかであり、周囲の細胞へ浸潤や転移などを起こさず、悪液質に陥ることもないため人体に殆ど悪影響を及ぼさない腫瘍です。

    良性腫瘍の代表的なものに、脂肪腫、子宮筋腫(きんしゅ)や卵巣嚢腫(のうしゅ)、皮膚のイボ、胃や大腸、胆嚢のポリープ等があります。

    一方で、悪性腫瘍は増殖スピードが速く、浸潤や転移をし、悪液質になるため人体に悪影響を及ぼす腫瘍です。

    内臓や皮膚、粘膜などを形成する上皮細胞に発生する悪性腫瘍を「癌」それ以外の非上皮細胞にできる悪性腫瘍を「肉腫」と区別しています。
    「がん」は「癌」と混合されやすいですが悪性腫瘍全体のことを指すときに用いられる言葉です。

    上皮細胞にできる悪性腫瘍には、咽頭癌、喉頭癌、舌癌、肺癌、乳癌、胃癌、大腸癌、子宮癌、卵巣癌、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌などがあります。

    一方の非上皮細胞(胃や腸の筋肉組織、骨、結合組織、造血器など)にできる悪性腫瘍には、骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫、繊維肉腫、白血病や悪性リンパ腫、骨髄腫などがあります。

    がんは「遺伝子の病気」

    私たちのカラダは約60兆個の細胞でできています。

    「がん」は正常な細胞の遺伝情報が様々な原因で傷つき変異を起こして細胞分裂のコントロールが効かなくなってしまう病気です。

    がんの原因には細胞のがん化を進めるがん遺伝子やがん抑制遺伝子と呼ばれる細胞のがん化を抑える遺伝子とがあり、どちらに異常が起きても細胞増殖のコントロールができなくなることで「がん」が発生する原因になります。

    がん遺伝子は正常な細胞が分裂をするために必要な遺伝子でもあり、がん抑制遺伝子によって細胞増殖を抑えられることです正常に働くため、がん遺伝子とがん抑制遺伝子は常にバランスが取れている必要があります。

    正常細胞は常に新陳代謝を繰り返しており、絶えず分裂を繰り返し新しい細胞を生み出しています。
    通常は発癌因子などで遺伝子が傷つけられてもすぐに発見されて修復されるが、この機能に異常が起きてしまうと正常な細胞ががん化するリスクが高まるため、遺伝子に傷がつく要因を少なくすることが、がん予防で重要な要素になります。

    活性酸素の影響

    私たちは生きていくために呼吸をし、酸素を体内に取り入れています。
    このとき約2~5%が「活性酸素」になります。
    「活性酸素」は殺菌・消毒作用があるので大切な物質なのですが、環境汚染、化学薬品の氾濫、過剰なストレスなどにより体内には過剰な「活性酸素」が発生しやすくなってきています。

    酸素には物を酸化させる力があります。

    鉄を放置するとサビ付いたり油も時間が経つと黒っぽく変色しますが、これらの現象が酸化です。
    私たちのカラダの中でも酸素を取り込むことでさまざまなものが酸化されサビ付いていきます。特に活性酸素の酸化力は強力であり、過剰に発生した活性酸素は細胞膜や遺伝子を傷つけ、体の機能を弱め、がんの原因にもなります。

    体内には活性酸素を除去するSODと呼ばれる酵素がありますが、加齢とともにSODの働きが衰えてきます。
    SODの働きを助けるSOD様食品を摂取することで老化を防ぐとともに細胞のがん化を予防する作用が期待できます。

    がんの進行

    がんは理論的にはがん細胞を完全に取り除くことができれば完治しますが、がんの発見が遅れて周囲の組織や臓器などに浸潤や転移すると完治させることが非常に難しくなります。

    がん細胞は周囲の組織に浸入して浸潤し続けます。
    例えば胃壁は粘膜層、粘膜下層、筋肉層、漿膜下層、漿膜層の5つの層に分けられますが粘膜層に発生したがんは発生から時間が経つにつれて粘膜下層から筋肉層へ、筋肉層から漿膜下層へとがんを進行させます。

    がん細胞が最初にできた部位(原発巣)から離れた部位に飛んで増殖することを転移といいます。
    転移は大まかに3つの種類があります。

  • 血行性の転移
  • がん細胞が血液中に混じって他の臓器に飛んで増殖し始める転移

  • リンパ行性の転移
  • がん細胞がリンパ液中に混じって他の臓器に飛んで増殖し始める転移

  • 播種性の転移
  • がんの浸潤が進むと臓器の壁を超えて胸腔や腹腔などに達して転移や増殖する場合があり、これを播種性の転移と呼びます。
    性質上、播種性の転移は進行したがん部位の近辺に発生する場合が殆どです。
    転移により発生したがん細胞は「転移性腫瘍」と呼ばれ、発生箇所のがん(原発巣のがん)と同じ性質を持っている場合が多いです。
    これにより同じ部位のがんでも原発で発生した場合と転移によって発生した場合とで治療の方針が異なる場合があります。

    がんの告知とインフォームド・コンセント

    がんは進行してしまった場合でも治療方法の選択によって患者さんの生活の質(Quality Of Life=QOL)には大きな違いが出てきます。

    患者は治療を受ける前に、医師から病態や治療方法について十分に説明を受け、メリットやデメリットを理解して最終的な治療方針は患者が決定しなくてはなりません。

    「インフォームド・コンセント」という言葉が最近多く聞かれるようになりました。

    医師から十分な説明を受けて、患者の意思を尊重し、治療方針については患者が最終決定するという事です。

    医学は年々進歩しており、患者毎の価値観の違いから治療方法の選択肢も多様化してきています。

    現代は医師の協力のもと、患者さんが積極的に自分の希望を伝えて治療方針を決定するという医師と患者が協力していく医療「パートナーシップ医療」の時代になっています。

    セカンド・オピニオン

    最近、日本でもセカンド・オピニオンの大切さが浸透してきました。

    セカンド・オピニオンとは直訳すれば「第二の意見」ということで、医療現場では「主治医以外の医師の意見」のことであり、同じ病気に対して専門領域や立場の異なる複数の医師から意見を聞くことを指します。

    患者さんには、他の医師の見解を求め情報を精査する権利があります。

    後悔のない治療を行うためには、様々な意見を十分吟味した上で、患者さんにとって最適の治療法を見つけることが重要です。

    患者さんは多くの場合、医学的知識を十分に持っていません。
    このような場合、主治医だけに病気についての説明を受けても、それが中立で正しい情報なのかを判断することができません。
    この際にセカンド・オピニオンを行うことで治療計画についての妥当性の高い判断が可能になります。
    治療法についていくつかの選択肢がある場合、そのどれを選ぶかは本来患者さん自身によって決定されるべきですが、セカンドオピニオンを怠ると本来提示されるべき選択肢が提示されない場合もございます。
    原則的にセカンド・オピニオンを行う際には同じ情報を元に必要があるため、主治医の紹介状と検査結果の詳細が必要となるため、まずは主治医に相談してみるといいでしょう。

    がんの治療

    がんは治療方法が多様化しており、治療法の選択によってその後のQOL(生活の質)や治療成績も変わるため治療方法の選択が重要になってきています。
    がんの治療には主に手術療法、放射線療法、化学療法(薬物療法)があります。
    手術療法では以前は再発・転移を起こす可能性を軽減するために病巣を含めて大きく切除する拡大手術が中心となっていましたが、切除後の後遺症が出やすく、QOLを低下させてしまう可能性が高いという欠点がありました
    そこで、近年では切除範囲をできる限り小さくして術後に放射線療法や化学療法など他の治療法を併用して再発・転移の危険性を軽減する治療方法が一般的になっています。
    更に身体の負担を小さくしようと開腹手術ではなく腹腔鏡や胸腔鏡などを使った手術も行われることもありますが、技術的に難しく実施例も少ないために医療ミスが起こりやすいという問題もあります。

    化学療法(薬物療法)の場合は薬剤の種類や使用時期、期間などでQOLや治療成績に大きな違いが出てきます。
    欧米では腫瘍内科という薬物療法を専門とする医師が多数おり、抗がん剤やホルモン剤などを中心に使った治療を行っています。
    しかし、残念ながら日本では薬物療法の専門教育を受けた、又は専門知識を持っている医師がほとんどいない(全国で100人にも満たない)という現状があります。
    化学療法は副作用が出やすいという欠点があります。
    薬の多くはがん細胞だけではなく正常な細胞にも影響を与え、悪影響の原因にもなります。
    副作用で死に至るケースも珍しくないため選択には注意が必要です。

    放射線治療は放射線をがん細胞に照射することでがん細胞を殺し、分裂・増殖を防ぐことを目的にした治療方法です。
    手術と違い臓器を切除する必要が無く、体力が無くても治療できる場合があるなどのメリットもありますが、正常な細胞を巻き込んで放射線が照射されると副作用が出る場合があります。
    放射線には許容量があり、大量の放射線照射を行うと副作用が出る可能性が高まるため照射量には注意が必要です。
    放射線治療はエックス線、ガンマ線、電子線などの他に、陽子腺や重粒子線を使った治療も一部の医療機関で行われています。

    治療の目的や方法、期間やデメリットなどの把握は患者にとってよりよい治療方法を選択する為に必要となります。
    後悔のない治療を行うためにも、患者さんやご家族は様々な治療情報の中から正しい知識を探し、選択していく必要があります。

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