◆唾液腺がん
唾液腺とは唾液を出すための組織のことで、大唾液腺と小唾液腺に分けて考えられます。
大唾液腺は耳下腺と顎下腺、舌下腺の3つからなり、この部分で作られた唾液は管を通じて口腔内に運ばれます。
一方の小唾液腺は口の中の粘膜やのどの粘膜の一部に存在し、直接口の中に唾液を分泌しています。
唾液腺がんは唾液を作る組織に発生するがんであり、耳下腺がん、顎下腺癌、舌下腺がん、小唾液腺がんに分類されます。
小唾液腺がんは、通常口腔がんとして扱われるため口腔がんの欄をご覧下さい。
唾液腺がんは頭頸部がんの一種ですが、頭頸部癌の3%程度と稀ながんになります。
唾液腺がんのうち最も多いのは耳下腺がんで唾液腺がんのうち60-70%、続いて顎下腺がんが20-30%、舌下腺がんは数%になります。
唾液腺がんの症状
耳下腺がんでは耳下部の痛み、腫れなどが現れることがあります。
神経まで潤した場合には顔面神経麻痺が起こることがあります。
顎下腺がんでは顎下が腫れて、痛みがでる場合があります。
舌下腺がんでは舌や顎の骨の下側が腫れてきたりします。
硬く腫れてきて痛みが伴うような場合には舌下腺がんの可能性が高くなります。
全ての唾液腺がんで頚部リンパ節にシコリが現れる場合があります。
唾液腺がんの検査
唾液腺がんの検査は、視診と触診が最初に行われます。
唾液腺がんは頚部リンパ節に転移しやすいためリンパ節を触診して腫れているかも確認します。
症状から唾液腺がんだと疑われる場合には、組織の一部を採取して生体検査が行われます。
穿刺細胞診は注射針でがんが疑われる部分の細胞を採取し、顕微鏡で確認する方法です。
唾液腺がんの場合は病理組織型の診断は腫瘍を摘出して確定します。
他の頭頸部がんの場合には細胞診で確定診断を行います。
CT検査はX線によって体内の詳細な画像を連続的に撮影することで鮮明な画像を得ることができ、正確で詳細な診断を行うことができます。
他臓器やリンパ節転移の有無を調べることができ、進行状況を調べる上で重要な検査になります。
MRI検査はCTとは違い磁場を使って体内の詳細な画像を連続的に撮影する検査です。
MRI検査はCT検査よりも組織分解能が高く、造影剤を用いらずとも血管を写すことが出来る程で僅かな病変からでも異常を診断することができます。
唾液腺がんの治療
唾液腺がんの治療法は外科療法が中心になります。
放射線療法や化学療法は殆どの唾液腺がんに対しては有効性は確認されておらず、補助的な意味合いでの治療が殆どです。
一部の唾液腺がんは放射線の感受性が高く、その場合には放射線療法が行われることがあります。
耳下腺がんの外科療法
がん細胞の大きさが小さく、浅葉に限局していて、進行が緩やかと判断された場合にはこれを切除する耳下腺浅葉切除術が選択されることがあります。
がん細胞はある程度大きくなっているが、耳下腺の中に納まっている場合には耳下腺全摘術が行われます。
がん細胞が耳下腺の周辺組織まで浸潤している場合には拡大耳下腺全摘術が行われます。
この場合は、がんの周りの皮膚組織や筋肉、骨の一部などが一緒に切除されます。
顎下腺がんの外科療法
がん細胞が顎下腺の中に限局している場合には顎下腺全摘術が行われます。
がん細胞が顎下腺の周辺組織まで浸潤している場合には拡大顎下腺全摘術が行われ、周りの皮膚組織や筋肉、神経、骨の一部、口腔粘膜などが一緒に切除されます。
舌下腺がんの外科療法
口腔がんの治療と同様の手術が行われます。
首回りのリンパ節に転移がある場合にはそれらのリンパ節も切除します。
これを頚部リンパ節郭清といいます。