◆口腔がん
口腔がん(口腔癌)は頭頸部がんの一種です。
口腔がんには舌にできる舌がんや舌と歯ぐきの間にできる口腔底がん、歯ぐきにできる歯肉がん、頬の内側粘膜にできる頬粘膜がん、口の天井部分にできる硬口蓋がんなどがあり、がん患者数全体の1%-2%程しか発生しない珍しいがんです。
口腔がんは口腔内の不衛生や口腔内への頻繁な刺激を原因に発生するケースが多いです。
また、他の頭頸部がんと同様にタバコやお酒も発生原因であるとされていますが、男女比が同程度である点から不衛生や刺激などのほうが主原因であると考えられます。
熱い食べ物や辛い刺激の強い食べ物を好んで食べる方も口腔の粘膜細胞が常に傷つきやすい状態になるためがん細胞化しやすいといえます。
※詳しくは生活習慣とがんの発生について書いた「がんは予防できる」をご覧下さい。
口腔がんの症状
初期の口腔がんでは刺激がある食べ物を食べるとしみたり痛みを感じたりすることがあります。
この症状は口内炎の症状と似ていますが、口内炎は触ってみるとぶよぶよとやわらかいのですが、口腔がんの場合には硬いシコリになっています。
がんが進行すると喋りにくさや、食べにくさ、出血などの症状を伴うようになり、頚部リンパ節に転移して顎の下や首が腫れ始めます。
口腔がんの検査
口腔がんの検査は、視診と触診が優先して行われます。
口腔がんは頚部リンパ節に転移しやすいため丁寧に触診しリンパ節の腫れ具合なども確認します。
がんの可能性が疑われる場合は組織の一部を採取して顕微鏡で調べる生検が行われます。
がんであると確定されるとCT検査、MRI検査などの画像検査によってがんの進行度や転移の有無を調べていきます。
口腔がんの治療
口腔がんの治療方法は外科療法が中心になります。
がん細胞が小さくてリンパ節転移がないような早期のがんの場合には放射線療法が行われることもあります。
治療方法はがんの進み具合(病期)やがんの部位、患者さんの年齢などから判断されます。
口腔がんの病期はがんの大きさや転移の有無など元にしたTNM分類で判定します。
T原発腫瘍(がん)の大きさ | |||
---|---|---|---|
T1 | T2 | T3 | T4 |
最大径2cm以下 |
最大径2cm以上 4cm以下 |
最大径4cm以上 |
隣接組織に浸潤している |
Nリンパ節転移の有無 | |||
---|---|---|---|
N1 | N2 | N3 | |
所属リンパ節転移なし |
同じ側の単発性リンパ節転移があり最大径が3cm以下 |
同じ側の単発性リンパ節転移があり最大径は3cmを超えるが6cm以下または、同じ側に多発性(複数)のリンパ節転移があるが最大径が6cm以下、または両側あるいは反対側のリンパ節転移があるが最大径が6cm以下 |
M遠隔転移の有無 | |||
---|---|---|---|
M0 | M1 | ||
遠隔転移なし |
遠隔転移あり |
Ⅰ期 |
T1,N0,M0の場合 |
---|---|
Ⅱ期 |
T2,N0,M0の場合 |
Ⅲ期 |
T3,N0,M0の場合 |
Ⅳa期 |
T4,かN0,M0またはT1-4,N2,M0の場合 |
Ⅳb期 |
T1-4,N3,M0の場合 |
Ⅳc期 |
M1の場合 |
口腔がんの治療(手術)
口腔がん治療では優先して外科療法が行われます。
首のリンパ節に転移がある場合にはそれらのリンパ節も同時に切除します。
口腔がんの治療(放射線療法)
口腔がんの殆どは放射線感受性が高くない高分化型扁平上皮がんであり効果は表れにくいですが、早期でリンパ節転移がない場合には放射線療法が行われることもあります。
しかし、早期の喉頭がんの場合は放射線療法が主体となります。
放射線療法を行っても消失しないリンパ節転移に対してはリンパ節を切除するリンパ節郭清が行われることがあります。
抗がん剤と併せて行う放射線化学療法が行われる場合もありますが、高齢や合併症の危険性などから理由で抗がん剤が使えない場合には単独で放射線療法が行われることもあります。
口腔がんの治療(化学療法)
口腔がんの場合、抗がん剤単独での治療では殆ど効果が見込めないため放射線治療と同時に行われることが多く、放射線療法や外科療法の補助的な治療として位置づけられています。
使用される抗がん剤は「5FU+シスプラチン(他にランダ、ブリプラチン)」が一般的です。
カルボプラチン=パラプラチンが使われることや、他にタキソールやタキソテールを使ったり、シスプラチンと併せてブレオマイシン、メソトレキセートなどが使われることもありますが、いずれも臨床段階になります。