がん(癌)部位別情報

◆喉頭がん

喉頭がんは頭頸部がんの一種です。

喉頭はのどぼとけに位置する機関で食道と気道が分離する箇所にあり、この部分に出来るがんを総称して喉頭がんと呼びます。

喉頭には食べ物が気管に入ることを防ぐ誤嚥防止の機能や声帯を振動させて声を出すための機能が備わっています。

喉頭がんは声帯から上にできる声門上がん、声帯にできる声門がん、声帯より下にできる声門下がんに分類されます。

喉頭がんのうち、声門がんの発生が最も多く60-65%程度、次いで声門上がんが30%程度、声門下がんはほとんどなく1-2%程度となります。

喉頭がんの原因

喉頭がんの主な発生原因はタバコお酒といわれています。
喉頭がんの発症者の9割は喫煙者であり、男性に多く発生(4~10倍)するがんで、60-70歳代で多く発生します。
米国の調査では男性の喫煙者が咽頭がんや口腔がんになるのは非喫煙者と比較して30倍にもなっています。(女性は5,6倍程度)

強いお酒を飲む地域では喉頭がん患者が増える傾向があるためお酒も喉頭がんの危険因子と考えられています。

極端に熱い食べ物辛い刺激の強い食べ物を好んで食べる人にも喉頭がんの発生は多いです。

※詳しくは生活習慣とがんの発生について書いた「がんは予防できる」をご覧下さい。

喉頭がんの症状

喉頭がんは種類によって症状や転移率、治療方法などが異なります。

  • 声門上がんの症状
  • 声門上がんの初期症状としては食べ物を飲み込んだときの異物感、痛み、いがらっぽさなどになります。がんが進行して大きくなり声帯にまで拡がると声が枯れるようになります。
    さらに進行すると呼吸困難が生じてきます。
    また、頚部リンパ節へ転移しやすいため、頚部リンパ節の腫れからがんの発症に気が付くこともあります。

  • 声門がんの症状
  • 声門がんの初期症状は声が枯れてしまう嗄声(させい)が起こりやすいです。
    症状が進行するとさらに嗄声が悪化し、呼吸困難や血痰などの症状が現れます。

  • 声門下がんの症状
  • 声門下がんは初期症状がほとんどありません。
    症状が進行すると嗄声や呼吸困難などが発生します。

    喉頭がんの検査

    喉頭がんの検査は、視診が最初に行われます。
    喉頭鏡という小さな鏡がついた柄を喉に入れて患者さんに声を出してもらいながらがんの有無や拡がり具合を観察します。

    また、鼻腔から内視鏡を挿入して直接観察する検査も行われます。

    喉頭がんでは頚部リンパ節を丁寧に触診してリンパ節転移の有無なども調べます。

    これらの検査によって喉頭がんが疑われる場合には、組織の一部を採取して顕微鏡で調べる生検が行われ、がんが確定されます。

    喉頭がんの治療

    喉頭がんの治療方法は外科療法や放射線療法が中心となります。
    治療方法はがんの進み具合(病期)やがんの部位、患者さんの年齢などから判断されます。

    喉頭がんの病期はがんの深さや転移の有無などによって分類されます。

    Ⅰ期

    がん細胞が1亜部(喉頭とさらに小さい単位に分けたもの)にとどまっている状態

    Ⅱ期

    喉頭内の隣接亜部位まで進展しているが、喉頭内にとどまっている状態で、頸部リンパ節転移も遠隔転移もしていない状態

    Ⅲ期

    がんのために声帯が全く動かなくなったり、3cmより小さい頸部リンパ節転移が1つで遠隔転移はしていない状態

    Ⅳ期

    がんが喉頭を越えて咽頭や頸部に進展する、頸部リンパ節転移が多発する、あるいはリンパ節転移が6m以上となる、またはがんと反対側の頸部リンパ節の転移や遠隔転移が認められる状態

  • 外科療法
  • 喉頭がんの外科療法には、声帯を一部残す喉頭部分切除術と喉頭を全て摘出する喉頭全摘出術があります。
    比較的早期の喉頭がんであればがんとその周囲だけを部分的に切除する喉頭部分切除術が行われます。
    声帯を切除する場合でもがんがある片側だけを切り取る方法を取れば、声を出す機能は残せるケースもあります。
    進行している喉頭がんの場合には喉頭を全て切除する喉頭全摘出術が必要であり、この場合には声を出すことはできなくなります。
    また、気道がなくなるため首やあごに気管孔という穴を開けて気道を確保します。
    声帯を失えば声を出すことができなくなりますが、最近では食道発声法や電気喉頭などの代用音声が工夫されるようになりました。

  • 放射線療法
  • 放射線療法は高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺す治療方法です。
    喉頭がんは分化型扁平上皮がんが多く、放射線への感受性は高いとはいえないので手術が第一選択肢になりますが、放射線療法の場合は声帯を温存できるため声も出すことができます。
    放射線療法を行っても消失しないリンパ節転移に対してはリンパ節を切除するリンパ節郭清が行われることがあります。
    最近は喉頭がんの治療において抗がん剤と併せて行う放射線化学療法が行われますが、高齢者、合併症があるなどの理由で抗がん剤が使えない場合には単独で放射線療法が行われることがあります。
    喉頭がんの治療において、どのタイミングで抗がん剤を使うのが効果的なのか、どの種類の抗がん剤を使うのが効果的なのか臨床試験が進められています。
    また、骨への転移のための痛み、脳の神経症状、呼吸の苦しさなどの症状を緩和する目的で放射線療法が行われることがあります。

  • 化学療法
  • 喉頭がんの場合、抗がん剤単独での治療では効果は確認できないため放射線療法と同時に行われることが多いです。
    喉頭がんの化学療法は放射線療法や外科療法の補助的な治療として位置づけられています。
    喉頭がんの治療で使用される抗がん剤としては「5FU+シスプラチン(他にランダ、ブリプラチン)」が一般的です。
    カルボプラチン=パラプラチンが使われることもあります。
    他にタキソールやタキソテールを使ったり、シスプラチンと併せてブレオマイシン、メソトレキセートなどが使われることもありますが、効果は臨床段階になります。

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