がん(癌)部位別情報

◆子宮体部がん(子宮体部癌)

子宮にできる悪性腫瘍の事を総称して子宮がんといい、婦人科系のがんのなかでは最も発生頻度の高いがんになります。

子宮は女性の生殖臓器であり、骨盤の中央に位置しています。
子宮の出口付近(膣に近い部分)を子宮頚部、子宮の上部、袋の部分を子宮体部と呼び、それぞれの部位に生じるがんを子宮頚部癌または子宮頸がん、子宮体部癌または子宮体がんとよび、同じ子宮がんでも区別して考えられます。

子宮体部がんの発生する率は子宮頚部がんに比べて少なく、以前は10%未満でしたが最近は子宮体部がんの患者さんが増加傾向にあり子宮がん全体の2割〜3割程度になってきました。
特に都心部で生活する女性で発生する割合が高くなっており、ライフスタイルとの関連性が高いとされています。

子宮体がんは40歳代から増え始め50歳〜60歳代で最も多く、閉経期前後から閉経期以降比較的早い時期の疾患であることがわかります。

【子宮体がんの原因】

子宮体がんの発生は、閉経後の女性、未婚の女性、妊娠・出産の経験がないまたは少ない女性、動物性脂肪を好む肥満体の女性に多く見られます。
これらが当てはまる女性は同時に乳がんの発生率も高くなることが分かっています。

また乳がん治療に使われるタモキシフェンというホルモン剤を長期間使っていると子宮体がんになる確率が上昇すると言われています。

子宮体がんの発生には女性ホルモンのエストロゲンが大きく関与していることが分かっています。
エストロゲンの主な産生源は卵巣および副腎と脂肪組織になります。

脳の視床下部から放出される黄体形成放出ホルモン(LH-RH)が下垂体前葉を刺激し、性腺刺激ホルモンである黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)を分泌させます。
そして、これらのホルモンが卵巣を刺激してエストロゲンを分泌させます。
一方、視床下部から放出される副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRF)、下垂体前葉からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌を促進し、副腎皮質からのアンドロゲン(男性ホルモン)が産生されます。
脂肪組織では副腎由来のアンドロゲンからアロマターゼという酵素の働きによってエストロゲンが産生されます。

閉経前

卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンは、排卵後の卵巣や胎盤から分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)というホルモンとともに月経・妊娠・出産をコントロールしています。

しかし何らかの理由によりプロゲステロンが分泌されずエストロゲンが単独で分泌される期間が続くと子宮体がんのリスクが高くなると考えられています。

現代の日本女性は、食生活の欧米化によって発育も体格もよくなりました。
そのため初経が昔より早く、逆に閉経は遅くなっています。
また未婚の女性が増え出産の機会も減りました。
これらはエストロゲンにさらされる期間が長くなったことを意味します。こうした背景から、子宮体がんが発病しやすくなったと考えられています。

閉経後

閉経後は卵巣に代わって、副腎から分泌されるアンドロゲンという男性ホルモンが脂肪組織に豊富に含まれるアロマターゼという酵素の働きによりエストロゲンに変換されてしまいます。
そのため閉経後は肥満であることが子宮体がん発生のリスクを高めることになります。

また肥満である女性は、食生活が脂っこいものが好きであったり、動物性たんぱく質、脂質が好きであったり、甘いものが好きである場合が多く、食生活が欧米女性に近いということもリスクを高めているといえるでしょう。

 

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【子宮体がんの症状】

子宮体がんも他のがんと同様、初期のものほど治る率も高くなるので早期発見・早期治療が大切になります。

子宮体がんは比較的初期のうちから不正出血が起こります。
従って「月経以外におかしな出血が長く続く」「閉経期のころに月経の上がりが悪い」「閉経後に不正出血がある」といった場合は、子宮体がんを疑う必要があります。
この不正出血が前がん状態のシグナルであることもあります。

 他に、排尿痛または排尿困難、性交時痛、骨盤領域の痛みなどの症状が現れることがあります。

これらの症状が見られた場合には産婦人科で検査を受けることをお勧めいたします。
なお、集団検診で行う「子宮がん検診」は通常、子宮頚部がんの検診を指します。
子宮体部がんのリスクを高める要因に当てはまる方は、子宮体部がんの検診を定期的に受ける事をお勧めいたします。

 

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【子宮体がんの診断】

<細胞診・組織診>

子宮体がんの細胞診は、子宮体部に細い器具を挿入して子宮内膜の細胞を採取し顕微鏡で調べる検査になります。

閉経後の萎縮によって子宮の入り口から内部までの通り道が細くなっていると,器具が入りにくくなっていることがあります。
このような場合は,子宮の入り口を少し拡げる処置をしてから子宮内膜の細胞を取ります。
多少の痛みを伴います。

細胞診の検査結果は5段階(クラスI-クラスV)に分けられます。
クラスI, IIは正常を、IIIは子宮内膜増殖症を、IV、Vはがんをそれぞれ想定してします。

この検査でがんが疑われる場合には「組織診」が必要となります。

組織診は子宮内膜の組織をキューレットと呼ばれる細い金属棒の先に小さな爪のある道具で採取し、顕微鏡で検査する方法が中心になっています。
少し痛みがあり、場合によっては出血が数日続くこともあるようです。

<内診・直腸診>

膣の中に指を入れる内診や肛門に指を入れて調べる直腸診を行い、がんの拡がり具合を調べます。
子宮鏡という内視鏡の一種を子宮内部に入れて直接見る場合もあります。

<画像検査>

組織診でがんと診断された場合には、がんの大きさやがんの拡がり具合、深さ、周辺臓器やリンパ節への転移の有無を調べるために画像検査が行われます。

◆超音波検査

体に超音波を発信し、組織に当たって反射してきた音波を捉えて画像を得る検査です。
外来でできて患者さんの負担も少なく、放射線を浴びる心配がないなどのメリットがあります。
閉経後に子宮出口が塞がり細胞診や組織診が難しい人でも超音波検査は有効です。

超音波検査には腹部に超音波発信器を当てて検査する腹部エコーと膣の中に発信器を入れて検査する経膣エコーがあり、子宮体がんの場合には経膣エコーが中心となります。

◆CT検査

CT検査(CTスキャン)はいろいろな角度から体内の詳細な画像を連続的に撮影しコンピュータを使って非常に鮮明な画像を得ることができます。
周囲の臓器やリンパ節転移の有無を調べることができ癌の進行具合を調べるためには重要な検査になります。

◆MRI検査

MRI検査は磁場を使っていろいろな角度から体内の詳細な画像を連続的に撮影する検査です。
放射線の被曝がなく超音波検査では見分けの付きにくいがんもMRI検査で診断できる場合があります。
がんの状況、近傍臓器との関係などをよく把握することができるため手術前の検査としては大変価値のある検査になります。

<血液検査>

子宮体がんの検査に使用される血液検査と基準値を示します。
基準値は施設によって基準値が異なりますので詳しくは検査機関にお問合せ下さい。
また、これらの数値は子宮体がん以外の病気でも高くなることがありますので、目安としてお考え下さい。

◆CA125 基準値 35U/ml以下

CA125は主に卵巣がんや子宮体部がんに有効な腫瘍マーカーで、他に子宮内膜症の診断にも使われる。

 

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【子宮体がんの治療】

<治療方法を決めるにあたり>

がんの治療は、医師の協力の下で治療方針、治療期間、メリット・デメリットなどの説明を十分にうけ、患者さんが自分の価値観などを考慮し患者さんが最終的な治療方法を最終的に決定する時代になりつつあります。

また医療の進歩とともに治療方法も多様化してきており、医師によって治療方法が異なることは珍しくなく、主治医以外の医師の意見を聞くセカンド・オピニオンを求めることが必要な時代になってきました。

詳しくは「インフォームド・コンセント」「セカンド・オピニオン」についてをご覧下さい。


子宮体がんの治療には「外科療法(手術)」と「ホルモン療法」「化学療法(抗がん剤)」「放射線療法」があります。
治療法は、がんの進み具合(病期)やがんの部位、患者さんの年齢、合併症の有無などから判断されます。

子宮体がんの病期(ステージ)はがんの深さや転移の有無などによって分類されます。

0期

子宮内膜に正常の細胞とは異なった顔つきの異型細胞といわれる細胞が増えている状態で、前がん状態です。(子宮内膜異型増殖症)

Ia期

子宮体部の内膜にがんがとどまっている状態。がんは子宮体部に限局している。

Ib期

子宮体部の筋層への浸潤が1/2以内の状態。がんは子宮体部に限局している。

Ic期

子宮体部の筋層への浸潤が1/2を超える状態。がんは子宮体部に限局している。

IIa期

がんが子宮体部だけではなく子宮頚部に拡がっているが、頚部の浸潤は粘膜内である状態。

IIb期

がんが子宮体部だけではなく子宮頚部に拡がっていて、頚部の浸潤は粘膜を超えている状態。

IIIa期

がんは子宮外まで拡がっているが、骨盤の領域以外にまでは拡がっていない状態で、がんが子宮の外の膜や骨盤の腹膜あるいは卵巣卵管に転移しているもの、あるいは腹水の中にがん細胞の認められる状態はIIIa期になります。

IIIb期

がんは子宮外まで拡がっていて腟壁に転移を認める場合はIIIb期になります。

IIIc期

がんは子宮外まで拡がっているが、骨盤の領域以外にまでは拡がっていない状態で、骨盤内、あるいは大動脈周囲のリンパ節に転移を認めるもの、もしくは、基靭帯(きじんたい)に浸潤を認めるものはIIIc期になります。

IVa期

がんが膀胱、あるいは腸の内腔に浸潤しているが、浸潤は粘膜までの状態はIVa期になります。

IVb期

がんが骨盤を越え遠隔臓器転移を認めるもの、あるいは腹腔内や鼠径部(そけいぶ:足のつけ根)のリンパ節に転移を認める場合はIVb期になります。

【子宮体がんの治療−外科手術】

子宮体がんの治療法は子宮を摘出する手術が中心となります。
しかし、0期の内膜異型増殖症や早期がんに対しては患者さんに妊娠・出産の希望がある場合には子宮を残してホルモン療法を行うことがありますが、子宮摘出が原則になります。

<子宮体がん単純子宮全摘出>

内膜異型増殖症やIa期までのごく初期の癌の場合には子宮、卵巣、卵管を摘出する単純子宮全摘出術が行われます。
閉経後の人では卵巣も一緒にとる場合もあります。開腹して行う方法(腹式)と、膣から摘出を行う方法(膣式)がありますが、腹式の方が確実性が高いため通常は腹式となりますが、子宮内膜異型増殖症の場合には膣式で行われることもあります。
膣式は傷跡が小さく、術後の開腹も早くなるメリットがあります。

卵巣を切除するのは、卵巣から分泌されるホルモン(エストロゲン)が子宮体がんの増殖を促す作用があるためです。

<子宮体がん拡大子宮全摘出>

I期、II期の子宮体がんが適応になる手術で、子宮とともに周囲の組織や膣の一部などを切除します。
骨盤内や腹部大動脈周囲のリンパ節切除(郭清)を行うこともあります。

<子宮体がん広汎子宮全摘出>

II期の子宮体がんに適応される手術です。子宮とともに膣や卵巣、卵管など周囲の組織も広い範囲で切除します。
がんがリンパ節にも転移している危険性が高いので骨盤内のリンパ節の切除も同時に行います。
場合によっては腹部大動脈周囲のリンパ節切除も行います。

 

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【子宮体がん−ホルモン療法】

ホルモン療法は、子宮内膜異形増殖症やIa期などごく早期のがんで妊娠・出産の希望があり子宮を残したいと希望する若い女性の場合にはホルモン療法で治療します。

基本的には子宮体がんの増殖や転移を抑える作用のある、黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きをする薬を飲みます。

ホルモン療法を行う際には子宮内膜を全て掻き出す子宮内膜前面掻爬(そうは)が必要になります。

【子宮体がん−放射線療法】

放射線療法は高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺す治療方法です。
日本ではIII〜IV期で手術ができない場合、または再発した場合などに行われることが一般的になっています。

放射線は体外から放射線を照射する外照射と子宮内に放射線源を入れて照射する腔内照射があり、組み合わせて行うこともあります。

放射線単独の治療は、放射線治療を希望される場合や、高年齢あるいは他の病気のために手術の行えない場合、病気の拡がりのため手術を行うことが困難な場合(III/IV期の一部)などに用いられます。 手術後に放射線療法を行うのは、リンパ節転移を認めた場合、病変が子宮の壁に深く浸潤していた場合、腟壁に浸潤していた場合などがあります。

放射線の照射量には決まりがあり、無理をして大量の放射線照射を行うと強い副作用が出る可能性が高いため注意が必要です。

あらかじめ医師に照射量(一日の量と期間)を確認しておく必要があります。

【子宮体がん−化学療法】

遠隔転移などのために外科療法で切除しきれない場合や、がんが子宮外に拡がっている場合(III期,IV期)、手術後にがんが再発した場合に化学療法(抗がん剤)による治療を行います。

使用される抗がん剤としては「シスプラチン(他にランダ、ブリプラチン)+ドキソルビシン=アドリアシン+シクロホスファミド=エンドキサン」が一般的です。

 

放射線療法や抗がん剤を用いた化学療法では白血球減少による免疫力の低下が起こりやすいため体を清潔に保つことが大切ですし、規則正しい生活を送る必要があります。
免疫力を賦活させることが大切
です。

また、骨髄損傷による白血球減少、血小板減少、貧血などが起こりやすいため造血機能を強化することも大切になります。

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