がん(癌)部位別情報

◆脳腫瘍(神経膠腫,髄膜腫,下垂体腺腫,神経鞘腫,転移性脳腫瘍)について

脳腫瘍とは、脳や脳の周辺組織などの頭蓋骨の内部にある組織に発生する腫瘍のことであり、脳組織自体から発生する「原発性脳腫瘍」と、他の臓器のがんが脳に転移してくる「転移性脳腫瘍」があります。

転移性脳腫瘍は他の臓器に発生した悪性腫瘍(がん)が脳に転移して発生します。
元のがんとしては、肺がんが圧倒的に多く、乳がん、大腸がん、胃がん、腎臓がん、膀胱がん、頭頚部がん、子宮がんなどが続きます。

転移性脳腫瘍の場合には複数箇所に腫瘍が転移しやすいという特徴が見られます。

脳腫瘍には他の腫瘍同様に良性腫瘍と悪性腫瘍がありますが、脳は頭蓋骨に囲まれしっかりと守られています。
脳腫瘍は頭蓋内という限られたスペース内に発生するため、たとえ良性の腫瘍であっても大きくなってくると脳を圧迫しさまざまな障害が現れ、命に関わる事態になることもあります。

したがって脳腫瘍が発見された場合には、たとえ良性腫瘍であった場合でも早期に治療を行う必要があるのです。

原発性脳腫瘍のうち神経膠腫は悪性、それ以外の髄膜腫や下垂体腺腫、神経鞘腫などは良性腫瘍になります。

【脳腫瘍の症状】

脳腫瘍は腫瘍が発生した部位によって現れる症状が異なりますが、共通して現れる症状としては頭痛があります。

脳腫瘍が大きくなると頭蓋内(ずがいない)の圧力が高まり脳が圧迫されて脳周辺の神経が刺激され頭痛が起こるようになります。
また、脳の周囲は脳室(のうしつ)というところで作られる髄液(ずいえき)で満たされているのですが、この髄液の頭蓋内の循環が腫瘍によって妨げられると髄液が一箇所に溜まってしまい水頭症(すいとうしょう)をおこし、頭蓋内の圧力が高まり強い頭痛や意識障害が起こる場合があります。
頭蓋内の圧力が極度に高まると脳の一部が陥入する脳ヘルニアがおこり突然意識不明になったり、呼吸停止がおこるなどの重篤な症状がおこることもあります。
たとえ良性の脳腫瘍であっても脳腫瘍が怖いのはこのためです。

脳腫瘍が脳の左の前頭葉にある運動野にできた場合には、右側の手足を動かす機能が犯されるため右半身麻痺がおこります。
逆に脳腫瘍が右側前頭葉にできた場合には左半身麻痺がおこります。
また前頭葉に腫瘍ができたときには他に無気力、痴呆様行動、性格の変化、尿失禁、言語障害などが現れることがあります。

脳腫瘍が脳の中心部分の下垂体(かすいたい)や松果体(しょうかたい)、視床下部にできると眼を動かす神経に障害が起こり物が二重に見えるなどの視覚異常が現れたり、無月経や成長障害などの内分泌障害が起こることがあります。

小脳や脳幹部分に脳腫瘍ができると手足のふらつき、聴力障害、顔面麻痺、めまい、平衡感覚障害などの症状が出ることがあります。

小児に発生する脳腫瘍は小脳にできることが多く、歩くときにふらついたり、まっすぐな姿勢を保つことができないなど平衡感覚に異常が出ることが多くなります。
また水頭症が起こりやすく頭囲が拡大したり食欲低下や突然の嘔吐、不機嫌であるなのの状態が続くこともあります。

このように脳腫瘍の場合、腫瘍が発生した箇所によりさまざまな症状が現れることになります。

その他の症状は腫瘍の種類により異なるので以下に簡単にご説明いたします。

<下垂体腺腫(脳腫瘍/下垂体腺腫)>

脳下垂体は全身のホルモンの中枢として多くのホルモンを分泌しています。
また、脳下垂体の横には脳に血管を送る血管や眼球を動かす神経が通っています。

下垂体腺腫は脳腫瘍全体のおよそ1割を占める良性の腫瘍で、ホルモンを過剰に分泌するホルモン産生型腺腫とホルモンを分泌しないホルモン非分泌性腺腫とがあり、症状が異なります。
ホルモンを分泌しない場合には腫瘍が大きくならないと症状が現れず発見が遅れることが多くなります。

ホルモン産生型腺腫ではホルモンが過剰に分泌されることで発生する症状(ホルモン異常症候群)がおこります。
また、非分泌性腺腫では、腫瘍が大きくなることで周囲を圧迫し症状(圧迫症状)が現れることになります。

−ホルモン産生型腺腫(脳腫瘍,下垂体腺腫)の種類−

プロラクチン産生腺腫(脳腫瘍,下垂体腺腫,ホルモン産生型腺腫)

下垂体腺腫の4割を占め、女性に圧倒的に多く見られる腫瘍になります。
女性の場合無月経と乳汁分泌が見られます。男性では性欲低下やインポテンツが見られます。
女性不妊症の原因のひとつとされています。

成長ホルモン産生腫瘍(脳腫瘍,下垂体腺腫,ホルモン産生型腺腫)

下垂体腺腫の2割を占め、男性に多く見られる腫瘍になります。
思春期に発症した場合には巨人症になることもあります。
多くの場合成人になってから発症し、手足の先端、あご、額、唇、舌などが肥大する末端肥大症になり数年間で顔つきが変わったり指輪や靴のサイズが合わなくなります。

副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫(脳腫瘍,下垂体腺腫,ホルモン産生型腺腫)

下垂体腺腫のうち数%にみられる腫瘍で、若年から中年の女性に多くクッシング病と呼ばれています。
ほとんどの方が肥満となり、顔は副腎皮質ホルモン剤を投与したときと同様満月のように丸くなるムーンフェースがみれれます。
手足に比べて胸や腹が太るのが特徴です。また、ニキビが出やすく体毛が濃くなり、下腹部に青紫色の筋が見られることもあります。
また、高血圧や糖尿病を合併することもあります。

下垂体ホルモン産生障害(脳腫瘍,下垂体腺腫の症状)

腫瘍が大きくなると下垂体ホルモンの産生障害が起こり、その場合女性では無月経ないし月経が不規則になる、男性ではインポテンツや性欲が低下し体毛が薄くなるなどの症状がでるようになります。
疲れやすくスタミナ不足になるなどの症状が出ることもあります。

視力・視野障害(脳腫瘍/下垂体腺腫の症状)

視神経を圧迫することで両目の上外側から見えにくくなってきて、さらに進行した場合には両目の外側半分が見えなくなる両耳側半盲と呼ばれる典型的な症状が現れるようになります。

頭痛(脳腫瘍/下垂体腺腫の症状)

腫瘍が大きくなることで頭痛が生じるようになります。

 

神経膠腫(グリオーマ)(脳腫瘍,神経膠腫)

神経膠腫(グリオーマ)は脳に発生する悪性腫瘍で、原発性脳腫瘍の約3割を占めます。
神経膠腫は腫瘍細胞の形態からいくつかに分類され、そのうちのほとんどは星細胞腫になります。
ほかに乏突起膠腫、上衣腫、脈絡乳頭腫、髄芽腫などがあります。

神経膠腫(グリオーマ)は浸潤といって、周囲の脳にしみこむように拡がるため正常な脳細胞との境界が不鮮明になり手術で腫瘍部分だけを全部摘出することが困難になります。
そのため手術後に放射線療法や化学療法(抗がん剤)などが必要となります。

神経膠腫(グリオーマ)のうち特に星細胞腫のうちで最も悪性度の高い膠芽腫(こうがしゅ)の場合には手術だけでは数ヶ月以内に再発してしまうため放射線療法は必須といえます。

神経膠腫(グリオーマ)の症状としては徐々に増強する頭痛、言語障害、麻痺、けいれん、性格の変化、痴呆、記憶障害などがおこります。

<神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)(脳腫瘍,神経鞘腫)>

脳腫瘍のうち神経鞘腫は神経を取り巻いて支える鞘(さや)に発生する腫瘍であり、脳腫瘍のおよそ1割を占めます。
神経鞘腫になると腫瘍が発生した神経の機能が低下するため聴力低下や耳鳴り、顔の知覚低下が起こるようになります。

神経鞘腫がある程度大きくなると他の神経を圧迫するため、それに伴う機能障害がでるようになります。
神経鞘腫のうち聴神経腫瘍では顔面神経麻痺になることが多く、三叉神経腫瘍では顔面の知覚低下、舌咽神経や迷走神経が腫瘍で侵された場合には嚥下障害、嗄声障害(声がれ)がおこります。

さらに神経腫腫が大きくなると脳幹や小脳が圧迫され運動失調や手足の運動麻痺、意識障害、水頭症による頭痛や嘔吐などが起こることがあります。

<髄膜腫(ずいまくしゅ)(脳腫瘍,髄膜腫)>

髄膜腫は脳腫瘍全体のおよそ2割を占め、女性に多く発生する良性の腫瘍ですが、頭蓋内のどの場所にもできるため、髄膜腫が発生した場所により現れる症状は異なります。

<転移性脳腫瘍(脳腫瘍,転移性脳腫瘍)>

他の臓器のがんが脳に転移して起こる転移性脳腫瘍は脳腫瘍全体の15%程度を占めます。
転移性脳腫瘍の場合、複数個の転移が認められることが多く転移先により現れる症状は異なります。

脳に転移するがんとしては肺がんが圧倒的に多く、乳がん、大腸がん、胃がん、腎臓がん、膀胱がん、頭頚部がん、子宮がんなどが続きます。

 

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【脳腫瘍の診断】

上記した脳腫瘍が疑われる自覚症状が続いている場合にはできるだけ早期のうちに医療施設での診察を受け検査を行うことが大切になります。

脳腫瘍の診断の中心はCTやMRIによる画像検査になります。
とくにMRI検査は脳腫瘍の診断には最も有効であり、問診や診察による症状の確認と画像検査とで9割方は診断が付きます。

<画像検査>

◆CT検査(脳腫瘍の検査)

CT検査(CTスキャン)はいろいろな角度から脳内の詳細な画像を連続的に撮影しコンピュータを使って非常に鮮明な画像を得ることができます。
5mm程度の大きさの腫瘍まで見つけることができるようになってきました。

脳腫瘍の大きさの変化や形状の変化、周囲の脳との位置関係などを見るうえで重要な検査になります。

ただし、過度のCT検査は放射線被ばくの危険性があるので注意が必要です。
日本人のがん発生の3.2%が過度の検査による被ばくが原因であるという報告もあります。

◆MRI検査(脳腫瘍の検査)

MRI検査は磁場を使っていろいろな角度から脳内の詳細な画像を連続的に撮影する検査です。
頭蓋骨の影響がなく脳あるいは腫瘍のみを映し出すことができるという特徴があります。
また脳の構造が細部にわたり観察でき腫瘍の正確な大きさや拡がりを知ることができ、個々の神経や重要な血管の走行も抽出することができるため脳腫瘍の診断においては最も有用な画像診断になっています。
放射線の被曝がないのも特徴です。

◆脳血管造影(脳腫瘍の検査)

脳の血管を造影することにより腫瘍への栄養血管や腫瘍自体の血管の性状などの詳細情報を取得でき診断や手術の検討に用いる情報を得ることができる検査です。

◆頭部レントゲン検査(脳腫瘍の検査)

神経の通過する骨の孔が腫瘍で拡がっている様子を捉える骨の検査です。

<血液検査>

◆腫瘍マーカー(脳腫瘍の腫瘍マーカー)

脳腫瘍が杯細胞腫である場合には胚細胞腫のタイプの判別のために血液を採取しHCGやAFPなどの腫瘍マーカーを調べます。

◆ホルモン検査(脳腫瘍のホルモン検査)

脳腫瘍の種類が下垂体腺腫である場合には腺腫によってホルモンが過剰に分泌されたり逆に分泌が低下することがあるためホルモンの状態を検査します。

<その他の検査>

脳腫瘍が疑われる場合には眼科や耳鼻科の検査を行い、視力・視野・眼底・聴力・顔面神経機能・前庭神経機能などの評価を行います。

 

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【脳腫瘍の治療

<治療方法を決めるにあたり>

脳腫瘍(神経膠腫/髄膜腫/下垂体腺腫/神経鞘腫/転移性脳腫瘍)の治療は、医師の協力の下で治療方針、治療期間、メリット・デメリットなどの説明を十分にうけ、患者さんが自分の価値観などを考慮し患者さんが最終的な治療方法を最終的に決定する時代になりつつあります。

また医療の進歩とともに治療方法も多様化してきており、医師によって治療方法が異なることは珍しくなく、主治医以外の医師の意見を聞くセカンド・オピニオンを求めることが必要な時代になってきました。

詳しくは「インフォームド・コンセント」「セカンド・オピニオン」についてをご覧下さい。


脳腫瘍の種類によって治療法が異なりますが、「外科療法(手術)」や「放射線療法」、「化学療法(抗がん剤)」での治療が行われます。
良性腫瘍と悪性腫瘍とで治療法は異なります。

<脳腫瘍の治療−放射線療法>

放射線療法では、できるだけ正常細胞を傷つけないようにするために照射範囲を小さくする工夫が行われてきました。

脳腫瘍の治療では「ガンマナイフ」と呼ばれる装置を使った放射線療法が主流になってきました。 ガンマナイフはヘルメット状の装置を頭にかぶり、腫瘍に向けて放射線をさまざまな方向から照射することができます。

ガンマナイフによって脳腫瘍を治療する際には患者さんの頭を固定する必要がありましたが、最近では頭を固定せずに機械を自在に動かしてさまざまな方向から放射線を照射するサイバーナイフという装置も脳腫瘍の治療で使われ始めています。

<脳腫瘍−下垂体腺腫の治療>

脳腫瘍のうち下垂体腺腫の場合、外科療法(手術)では腺腫の進展方向や大きさなどの条件により経鼻的手術か開頭手術が選択されます。

ホルモン非分泌性腺腫の場合には手術に併せて放射線療法が選択されます。

プロラクチン産生腺腫や成長ホルモン産生腺腫の場合には手術に併せてプロラクチン産生を抑制するブロモクリプチンという薬と放射線療法が選択されます。

副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫では手術と放射線療法が行われます。

<脳腫瘍−神経膠腫の治療>

脳腫瘍のうち神経膠腫は正常細胞に浸潤するように拡がるため手術で腫瘍全てを取り除くことが難しく、放射線療法が手術と併用して原則的に行われます。

また、ニドランという抗がん剤を併用して放射線療法を行うこともあります。

しかし、数ヶ月から数年の間に再発してしまった場合には西洋医学による治療は困難であることが現状です。

 

放射線療法や抗がん剤を用いた化学療法では白血球減少による免疫力の低下が起こりやすいため体を清潔に保つことが大切ですし、規則正しい生活を送る必要があります。
免疫力を賦活させることが大切
です。

また、骨髄損傷による白血球減少、血小板減少、貧血などが起こりやすいため造血機能を強化することも大切になります。

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